ビジョナリー経営(理念経営)とは、企業理念を中心に置いた経営です。理念経営のゴールは、『全員が生き生きと働き、成長期にも危機にも強い永続する会社』です。そのために、“会社がめざす目的と大切にする価値観=企業理念”を明らかにし、全員で共有浸透して、その実現を追求していきます。
[解説] 別の表現で言えば、理念経営とは、「もっとやろう」という経営です。対極から申し上げると、あれもこれも「するな」という経営では、働く人の思考は次第に停止し、現場は指示待ち集団へと変わっていきます。これでは時代の激しい変化に対応していくことはできません。コンプライアンス(法令順守)など「するな」のルールももちろん大切ですが、それらの多くはいい大人にとっては常識と呼べるものです。むしろ、自分たちがめざす目的や価値観を共有しながら、「もっとやろう」と切磋琢磨し合えた方が、会社として従業員全員の力を結集できるのではないでしょうか。そうなれれば、法令違反を起こそうなどという心の隙間も自ずとなくなっていくものです。そしてトップから新人まで、全員が、互いに自分たちの「もっとやろう」を追求していける経営をめざすのです。
Ⅰ. 経営が意思決定で迷わない
Ⅱ. 上司が部下の指導で迷わない
Ⅲ. 従業員が自律的に行動し、生き生きと働く
Ⅳ. 社内の意思が一つになり、とてつもない力を発揮する
(成長期にも、危機にも強い組織となる)
Ⅴ. 顧客や社会に理解され支持される →お客様が増えてブランド化する
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結果、『全員が生き生きと働き、成長期にも危機にも強い、永続する会社』になれるのです。
世界で250年以上永続している会社の、実に3社に2社が日本企業であることをご存じだったでしょうか。企業としての強さの秘けつは、理念経営にありました。
理念経営で有名な企業といえば、ザ・リッツ・カールトン・ホテルやジョンソン・エンド・ジョンソン社、ウォルト・ディズニーなどが挙げられるでしょう。しかしながら世界で250年以上永続している会社の3社に2社が日本企業であること、そして日本は創業200年以上の会社数でダントツNo.1であり(下表)、創業100年以上の会社が約2万社あることは意外と知られていません。そしてこれら日本の老舗企業のほとんどは、何らかの形で理念経営を行ってきました。企業理念の呼び方は家訓、社訓、綱領、覚書などとさまざまで、中身も「信頼第一」「三方よし」「先義後利」「家族経営」など各社で異なるものの、いずれも経営の中心に理念を置いてきた結果、強い組織であり続けられたのです。
理念経営は最近の単なる流行ではなく、日本が古来より大切にしてきた、“日本ならではの”強い経営のあり方なのです。